合格者から見たITストラテジスト試験の難易度と傾向

アイキャッチ_難易度

ITストラテジスト試験は一般的には難易度が高いとされていますが、実際にはどうなのでしょうか。

本記事では、ITストラテジスト試験の概要、難易度及び合格率などについて、知識ゼロから独学で一発合格した筆者の体験談を交えながら解説します。

ITストラテジスト試験を受験される方の参考になれば幸いです。

はじめに

< この記事を書いているのはこんな人 >

・文系4大卒
・金融機関勤務
・IT系部署への異動を機に「応用情報技術者資格」を取得
・続けて「ITストラテジスト試験」に合格

ITストラテジスト試験とは

ITストラテジスト試験とは「情報処理技術者試験(※)」のうち最も難易度が高いとされる試験であり、「情報処理の促進に関する法律」に基づき経済産業省が認定を行う国家試験です。

図1
出典:新情報処理技術者試験の体系図(情報処理技術者試験 新試験制度の手引

※情報処理技術者試験とは

情報処理技術者試験は、「情報処理の促進に関する法律」に基づき経済産業省が、情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上の水準であることを認定している国家試験です。

 情報システムを構築・運用する「技術者」から情報システムを利用する「エンドユーザ(利用者)」まで、ITに関係するすべての人に活用いただける試験として実施しています。
特定の製品やソフトウェアに関する試験ではなく、情報技術の背景として知るべき原理や基礎となる知識・技能について、幅広く総合的に評価しています。

IPA情報処理推進機構 試験の概要


1~4段階のレベル及び専門分野に応じて全12種類の試験があります。

①ITパスポート試験、②情報セキュリティマネジメント試験、③基本情報技術者試験、④応用情報技術者試験、⑤IT ストラテジスト試験、⑥システムアーキテクト試験、⑦プロジェクトマネージャ試験、⑧ネットワークスペシャリスト試験、⑨データベーススペシャリスト試験、⑩エンベデッドシステムスペシャリスト試験、⑪IT サービスマネージャ試験、⑫システム監査技術者試験

参考)高度試験とは

情報処理技術者試験のうち、レベル4に該当する下記の8つの試験を特に "高度試験"と呼びます。

ITストラテジスト試験
・システムアーキテクト試験
・プロジェクトマネージャ試験
・ネットワークスペシャリスト試験
・データベーススペシャリスト試験
・エンベデッドシステムスペシャリスト試験
・情報セキュリティスペシャリスト試験
・ITサービスマネージャ試験

ITストラテジスト試験の難易度

ITストラテジスト試験の受験を検討する方が一番気になるであろう試験の難易度について解説します。

偏差値について

資格が偏差値でランク付けされているのを見かけることがありますが、「ITストラテジスト」の資格偏差値は大体において公認会計士や税理士と並ぶ最高ランクに位置しています。

このように言われるとなんだかすごい資格のように思えますが、実際にITストラテジスト試験に合格した私からすると偏差値はほぼ当てになりません

例えば、公認会計士は試験範囲が広く学習に時間がかかるので合格するのに最低でも数年かかりますが、ITストラテジスト試験はコツを押さえて対策すれば知識ゼロから始めても1~2ヶ月で合格することが出来ます。
それぞれ必要な学習のボリュームが全く違いますし、分野も異なるので公認会計士や税理士の試験とITストラテジスト試験を同じ土俵で比べることなど出来ないのです。

とは言っても、自分が受けようとする試験が大体どれくらいのレベルか気になりますよね。
その場合は偏差値ではなく難易度を確認するのがベターです。

一口に難易度と言っても「合格率が低い」「受験資格に制約がある」「試験範囲が広く学習量が多い」、「高得点を取らないと合格出来ない」など、様々な切り口があります。
順番に確認していきましょう。

合格率

ITストラテジスト試験の直近5回の合格率は以下の通りです。

  合格率
(合格者数/受験者数)
受験者数
(応募者数)
合格者数
H28秋 14.0% 4,594名
(6,676名)
645名
H29秋 14.7% 4,747名
(6,984名)
700名
H30秋 14.3% 4,975名
(7,449名)
711名
R1秋 15.4% 4,938名
(7,527名)
758名
R3春 15.3% 3,783名
(5,669名)
579名


ITストラテジスト試験の合格率は例年14~15%で推移しています。
ちなみに、レベル1の「ITパスポート試験」の合格率が約50%、レベル2の「基本情報技術者試験」の合格率が25%です。
当然ですが、試験のレベルが上がるにつれ合格率も低くなっていきます。

なお、試験の主催団体であるIPAは勤務先種別、最終学歴、平均年齢、経験年数などさらに詳細な統計情報を発表しています。

受験資格

受験資格···特にな

ITストラテジスト試験に受験資格の制約はありません。
受験料を支払えば、実務経験や年齢、国籍 等を問わず誰でも受験することが出来る試験です。

試験範囲と学習量

結論から言うと、ITストラテジスト試験の試験範囲は広く浅いです。
合格に必要な学習量もそれほど多くありません

1か月前から準備を始めれば十分間に合いますが、試験範囲が広いのでやみくもに勉強するのは危険です。

具体的な試験範囲や学習量、試験勉強のコツについては次回の記事で詳しくご紹介します。

合格点

最後に、ITストラテジスト試験の合格点(合格ライン)についてです。

経験者としてはITストラテジスト試験の難易度を上げている大きな要因はここにあると感じます。

ITストラテジスト試験の合格ラインは6割とそれほど高くないのですが、多段階選抜方式」が採用されているため注意が必要です。詳しく見ていきましょう。

ITストラテジスト試験は午前I、Ⅱ及び午後Ⅰ、Ⅱの4つの試験から構成されています。

  出題形式 解答数 合格基準
午前Ⅰ 4択式30問 60/100点
午前Ⅱ4択式25問 60/100点
午後Ⅰ記述式2問
(4問のうち2問を選択)
 60/100点
午後Ⅱ論述式1問
(3問のうち1問を選択)
 ランクA

午前Ⅰ~午後Ⅱの試験の得点がすべて基準点以上の場合に合格となります。


なお、次の通り多段階選抜方式が採用されています。

・午前Ⅰ試験の得点が基準点に達しない場合には,午前Ⅱ・午後Ⅰ・午後Ⅱ試験の採点を行わ
ずに不合格とする。

・午前Ⅱ試験の得点が基準点に達しない場合には,午後Ⅰ・午後Ⅱ試験の採点を行わずに不合
格とする。

・午後Ⅰ試験の得点が基準点に達しない場合には,午後Ⅱ試験の採点を行わずに不合格とする。

各試験で基準点に達しないと合格できないので、午前Ⅰや午前Ⅱで思うように解けなかったと感じた人は、途中で帰ってしまいます。

午後Ⅱ試験まで受ける人はめちゃ少ない!

私が受験した時は、午前Ⅱの試験では50~60人ほどいた受験者が、最後の午後Ⅱ試験では4人しか残っていませんでした。

文系出身者や学生に有利

前述のように、ITストラテジスト試験は午前Ⅰ~午前Ⅱの各試験全てで基準点に達する必要があるため、点数が取りやすい午前の選択式問題で得点を稼いで、苦手な記述式、論述式を補填するやり方が出来ません。
そのため、「文章を書くことが苦手な人や小論文を何年も書いていない年配の受験者にとっては難易度が非常に高い試験」となっているように思います。

逆に、文章を書くことにそれほど抵抗が無ければ、私のようにまったくの専門外で入社数年の社会人でも合格することが出来るのです。

論文が苦手な場合は?

「小論文なんて書けない!」という方もあきらめる必要はありません。

実際はそんなにレベルの高い論文を求められているわけではありません
問題文で指定される字数制限を守り、聞かれたことに答えれば合格できます。

私はシステム開発経験が無かったので、このテキストの例文を読んでイメージを掴みました。
午前試験は問題集を買わなくてもなんとかなるので、あまりお金を掛けたくない方はこの1冊で十分です。
ちなみに私は冊子を購入しましたが、サイズが大きくて邪魔かつ電車内で読むのが大変なのでkindle版をおすすめします。

過去問題やオリジナル問題を使い、時間内に論文を設計し、合格レベルに仕上げるにはどうすればいいのか。一つ一つ確認しながら進めていきます。午後1問題の事例を使って、論文を設計する方法も説明しています。巻末ワークシートを使いながら、実践形式で、論文に対する恐怖感を払拭していきます。第2部には専門家による論文が36本も掲載されています。(Amazonより)

まとめ

以上、ITストラテジスト試験の概要や難易度、実際に受験してみての感想などをご紹介しました。

ITストラテジスト試験は、ITに関する高度な知識を有することを客観的に第三者に証明できる資格です。
平均合格率14%と難易度が高めですが、必ずしも業務経験を必要とされない試験なので、実は学生や若手社員でもチャレンジしやすい試験です。

独学での合格も十分狙えますし、受験料も安価な上に資格を維持するための手数料などもかからないので自身のスキルアップにおすすめの大変コスパの良い資格です。

試験対策のコツや勉強の進め方については次回の記事でご紹介します。

タイトルとURLをコピーしました